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鍼灸師も医療チームに参加を

 現代医療は先進国において「高度医療」は高度の技術と専門知識を習得した専門家を必要とします。しかし、情報時代の現在ではその専門知識の情報量が指数関数的に増え、専門家達はその専門分野以外のことを十分に把握でききれない状態が避けられません。

 一方、「臨床現場における「勘」の利用を廃止すべきである」と報道され、「エビデンスベースド医療」の方向へ発展しつつあります。これらの発展に伴うべき横の連携が発達している「治療チーム」の構成は現在まだ不十分と思われます

 ここで鍼灸師などの職人の役割があると思います。つまり、鍼灸師は職人であり、長い臨床経験を通して自分の触覚や勘を鍛えているため、「患者の体の表面に書かれているデータを読み取る」ことによって、日常的の診察で見落としやすい病態を発見することが可能でしょう。

 例えば、以前から腰脚痛を訴えるある患者が狭心症で一時的に入院しました。そこで心臓を専門とする内科の先生が主治医となり、脚の痛みのため整形外科の先生にも診察を受けました。その一ヵ月後私は始めてその患者を往診しました。触診は、脚の痛みが腹部にある拳大の腫瘍によるものだと判明しました。内科の先生も整形の先生も自分の管轄範囲外ため腹部を触診しなかったそうです。

 私の治療院で過去6年間の来院患者の中に上記のような患者が既に3人ほどいました。いずれの患者も「高度医療」を受診しました。私の治療院において年間の治療数は500回前後です。未だ癌が発見されていない患者が2年に1人、あるいは1000回の治療ごとに1人がいる可能性が高いと思われます。日本鍼灸師会によって全国に凡そ14216軒の治療院があります。患者数が私の治療院と同程度だと推定しても、年間最低7,500人の患者において鍼灸師が癌を発見する可能性があります。従って、統計学的な観点からは、鍼灸師も絶えず、来院患者の中には病院にかかっているにも拘わらず、未だ発見されていない癌があり得る可能性を念頭に置かなければなりません。

 よって、鍼灸師等の職人は癌の発見にこれほど大事な貢献をするので、充実した医療を支えるために医療チームに加えるべきだと信じています。